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神楽坂雲如の妄想図書館

日々の妄想を書き綴った笑いと狂気のブログです。 妄想ですので本気にしないでください。

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営業所長の悲運

俺もようやく管理職になった。
田舎の小さな営業所長だが、とまれ一組織の長だ。
ふり返れば苦難の連続だった。
俺ほど上司に恵まれなかった者もおるまい。
俺の会社は人事管理がなっていないので、無能で無気力な奴でも、ゴマすりが上手だったり、コネがあったりすると、そこそこに地位につける。
しかし、そんな無能で無気力な奴に仕えた部下は悲惨だ。
俺が今まで仕えた上司は、みな無能で無気力で無責任で身勝手で不快な老人ばかりだった。
俺のサラリーマン人生は、馬鹿上司のおもりに明け暮れた。
これでは出世はおぼつかない。
実際、同期の中ではいちばん出世が遅れた。
それでもなんとか所長になれた。
これはすべて忍耐のたまものだ。
よくやったと自分をほめてやりたい。

しかし、俺は半年後には定年になる。
せめて残された短い期間を、好き放題にふるまって、俺が受けた苦痛の十分の一でもいいから、部下に味わせてやりたい。
俺は計画を練った。

俺の外見は若々しく、とても定年間際には見えない。
なので、わざと年寄りくさく扮して、部下に不快感をあたえることにしようと思う。

俺の髪はふさふさで、黒々しているので、床屋へ行って髪をすいて薄毛にしてもらおう。
髪を脱色して白髪にしてもらおう。
歯は全部抜いて総入れ歯にしよう。
服装はめいっぱい地味で、流行遅れで、年寄りくさくしよう。
背をかがめて、ポケットに手を入れて、よろよろ歩こう。
にんにく、にら、くさやなど臭い食べ物をがつがつ食い、たばこをいっぱい吸って、決して歯を磨かず、息を臭くしよう。

部下に顔を近づけて、臭い息を吹きかけながら、
「おい!アレをナニしろ」 と言おう。
「何ですか?」 と聞き返したら、
「何ですかじゃねえよ。アレだよ。ったくもう」と言おう。

あさっての方角を向いて、
「おう、あれはなんだんべえ」と言おう。
「何ですか?」と聞き返したら、
「なんだんべえって聞いてるんだよ、このタコ!」と言おう。

部下に命令するときは、なるべく主語や述語を省略し、意味不明にしよう。

「おーい!お茶!」 といって部下にお茶をいれてもらおう。
ずるずると下品で大きな音を立ててお茶を飲もう。

時々入れ歯をはずして、文鎮代わりに書類の上に置こう。

勤務中に会社の電話で株の取引をしよう。
ラジオの株式市況を聞いて、一喜一憂しよう。
証券会社の社員の応対が悪いと、電話で長々と苦情を言おう。

部下の意見は一切聞かないことにしよう。
「それでは対応できないでしょ」 とあめ玉をしゃぶっているような、ろれつのまわらない、かん高い声で言おう。

週の初めに、週間行動計画表を提出させ、計画を厳格に実行させ、計画表にない緊急な仕事をすることは決して許さないようにしよう。
そのために取引先から苦情が来ても、仕事が滞っても、業績が悪化しても、それはすべて計画性のない部下の責任だ。

部下がいそがしく立ち働いているのを横目に、あくびをしよう。
「ハーッ、ハッハッハッ」 と人を馬鹿にしたような不快な声を出してあくびをしよう。

時々「はあ~」とやる気のないため息をついて、部下の意欲をそごう。

部下が電話をしているすぐそばで、大声で無駄話をしよう。
大声で猥談をして、「ひっひっひ」と笑おう。

昼食はべちゃべちゃと下品な音をたてて豚のように食おう。

「ズズーッ」と大きな音をたてて鼻をかもう。
「ガーッ ペッ」と大きな音をたてて痰を吐こう。
紙を広げて、ハナや痰をしげしげとながめるのもよい。

暑くもないのに、扇子をパタパタさせよう。

部下の名前は覚えず、「おいっ」とか「ようよう」とか呼ぼう。

部下のプライバシーを詮索して、あれこれ詰問しよう。

部下に遠回しに盆暮の付け届けを要求しよう。
付け届けをしない部下には意地悪をしよう。

すべてに対して、後ろ向きに、消極的に対処しよう。
問題がおきたら、ひたすら責任回避をしよう。

都合の悪いことは物忘れし、堂々と前言を翻そう。

部下の功績は自分の功績とし、部下の失敗は決して許さないことにしよう。

たちまち悪評が本社へ伝わるだろうが、気にすることはない。
まもなく退職なのだから・・・・


こうして、俺は期待に胸をふくらませて新任地へ赴任した。

驚いた。
なんということだ。

営業所とは名ばかりの安アパートの一室であった。
部下は一人もいなかった。
すべての仕事を自分一人でしなければならない。
便所へ行く暇もないほどいそがしい。

俺は会社を呪った。
30数年ひたすら耐え忍んできたこの俺に、なんという冷酷な仕打ちをするのだ。

(これはフィクションです。実在の個人や団体とは一切関係ありません。)
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プロフィール

HN:
神楽坂雲如
性別:
男性

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