忍者ブログ

神楽坂雲如の妄想図書館

日々の妄想を書き綴った笑いと狂気のブログです。 妄想ですので本気にしないでください。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

会長の命令

某管弦楽団に入団したファゴット奏者のY君は、会長のところへ挨拶に行きました。
会長というのは、消費者金融の経営者で、悪辣な手法で名高い人物ですが、数多くの企業を買収して多角経営に乗り出した際、部下の進言で、企業イメージを高めるため、経営の危機に瀕していた某管弦楽団を支援することにしたのです。
今では会長は楽団最大のスポンサーになっています。
といっても、会長には知性も教養もまるでなく、音楽などには全く興味がありません。
しかし、どういうわけか新入団員は、会長のところへ挨拶に行くことが慣例になっていたのです。

Y君が会長に型どおりの挨拶をすると、
「楽器は何をやっちょるのかね?」
と会長が尋ねました。
普段はそっけなく「ああ」と言うだけで済ましてしまう会長が、こんなことを言うのは全く異例のことです。
Y君は音楽家には珍しく、体育会系の風貌の青年なので、会長の好みに会ったのかもしれません。

「ファゴットをやっています。」

「何じゃあ、ファゴットっちゅうのは?」

「これです」
とY君は楽器をケースから出して見せました。

「ほう、バズーカ砲みてえだな、ひっひっひ。
せっかくだから、何かやってくんろ。
そうだな、『うらどれホースケさん』でもやってくんろ。」


「すみません。そういう曲は知らないんですが。」
とY君が言うと、

「なんだ、知らねえんか。しょうがねえな。
よし、わしが歌ってきかせるから、そのとおりにやるんだ。」

と言って会長が歌い出しました。
これには控えていた秘書もびっくりしました。
会長に仕えて20年、会長が歌ったのを聞いたことは一度もなかったからです。
会長はよほどY君がお気に召したようです。

♪うらどれホースケさんは穴の中
♪売られて行くんじゃないかいな

Y君は非常に率直な性格なので、不快感をこらえながらも、会長が歌ったとおりに、節回しもそっくりに演奏しました。
俗悪な節ですが、ファゴットの独特な音色が、コミカルな味わいを醸しだしました。
会長は感動して、Y君を会社専属の楽士に任命しました。
毎日、朝昼晩の3回、始業と昼休みと終業の時報として『うらどれホースケさん』を演奏するよう命じたのです。
いかに率直なY君といえども、こんな命令には従えません。
Y君が命令を拒絶すると、会長は激怒して、楽団への支援をやめると宣告しました。
最大のスポンサーを失った楽団は、解散を余儀なくされ、Y君は失業しました。
PR

コメント

お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

トラックバック

プロフィール

HN:
神楽坂雲如
性別:
男性

P R