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神楽坂雲如の妄想図書館

日々の妄想を書き綴った笑いと狂気のブログです。 妄想ですので本気にしないでください。

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冗談が現実に

いろいろ妄想を書いてきましたが、これが本当になる恐ろしい時代がやってきました。
現実の恐ろしさを前にして、今は妄想を書くことができません。
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恐ろしい・・・

思いつくにまかせて、駄文を書いてきましたが、これらが現実になりつつあるような世相です。
なんとも恐ろしいことです。

不平等国家

某国は階級社会で、国民は5つの階級に区分されている。
1等階級は、貴族や大富豪から成る。
2等階級は、高級官僚・高級軍人及び大企業の経営者などから成る。
3等階級は、上級サラリーマンや中小企業経営者などから成る。
4等階級は、いわゆる労働者階級から成る。
5等階級は、底辺労働者や失業者などから成る。
階級は、社会的地位や資産に基づき政府が判定し、階級証明書が発行される。
国民は、常に階級証明書を携帯していなければならない。

某国の階級制度を如実に実感できるのが国有鉄道である。
国有鉄道の列車は、1等車から5等車までの5種類の車両で構成されている。
1等車は高級ホテルさながらの豪華な車両で、1等階級専用である。
1等階級は自家用飛行機や超高級車を所有しており、めったに列車を利用することはないので、1等車はいつも空席である。
しかし気まぐれで「今日は列車に乗ってみよう」という1等階級が現れたときに備えて、いつも1等車を連結しているのだ。
2等車は、JRのグリーン車に相当する2等階級専用車両である。
3等車は、普通車両に相当する3等階級専用車であるが、利用者は比較的多く、通勤時間帯では座れないことも多い。
4等車は、貨車に等しい劣悪な車両で、椅子はなく、利用者は非常に多いので、いつもぎゅうぎゅうのすし詰め状態である。
5等車は、無蓋の貨車で、雨風にさらされる過酷な環境であり、運行中に死者が出ることも珍しくない。

あまりの不平等さに、国内外から非難が寄せられているが、国有鉄道総裁は動じない。

「何が不平等なものか。確かに車両は1等から5等までに分かれているが、料金は同じなのだ。平等ではないか!」

ちなみに、某国は税金も平等なのだそうだ。

会長の命令

某管弦楽団に入団したファゴット奏者のY君は、会長のところへ挨拶に行きました。
会長というのは、消費者金融の経営者で、悪辣な手法で名高い人物ですが、数多くの企業を買収して多角経営に乗り出した際、部下の進言で、企業イメージを高めるため、経営の危機に瀕していた某管弦楽団を支援することにしたのです。
今では会長は楽団最大のスポンサーになっています。
といっても、会長には知性も教養もまるでなく、音楽などには全く興味がありません。
しかし、どういうわけか新入団員は、会長のところへ挨拶に行くことが慣例になっていたのです。

Y君が会長に型どおりの挨拶をすると、
「楽器は何をやっちょるのかね?」
と会長が尋ねました。
普段はそっけなく「ああ」と言うだけで済ましてしまう会長が、こんなことを言うのは全く異例のことです。
Y君は音楽家には珍しく、体育会系の風貌の青年なので、会長の好みに会ったのかもしれません。

「ファゴットをやっています。」

「何じゃあ、ファゴットっちゅうのは?」

「これです」
とY君は楽器をケースから出して見せました。

「ほう、バズーカ砲みてえだな、ひっひっひ。
せっかくだから、何かやってくんろ。
そうだな、『うらどれホースケさん』でもやってくんろ。」


「すみません。そういう曲は知らないんですが。」
とY君が言うと、

「なんだ、知らねえんか。しょうがねえな。
よし、わしが歌ってきかせるから、そのとおりにやるんだ。」

と言って会長が歌い出しました。
これには控えていた秘書もびっくりしました。
会長に仕えて20年、会長が歌ったのを聞いたことは一度もなかったからです。
会長はよほどY君がお気に召したようです。

♪うらどれホースケさんは穴の中
♪売られて行くんじゃないかいな

Y君は非常に率直な性格なので、不快感をこらえながらも、会長が歌ったとおりに、節回しもそっくりに演奏しました。
俗悪な節ですが、ファゴットの独特な音色が、コミカルな味わいを醸しだしました。
会長は感動して、Y君を会社専属の楽士に任命しました。
毎日、朝昼晩の3回、始業と昼休みと終業の時報として『うらどれホースケさん』を演奏するよう命じたのです。
いかに率直なY君といえども、こんな命令には従えません。
Y君が命令を拒絶すると、会長は激怒して、楽団への支援をやめると宣告しました。
最大のスポンサーを失った楽団は、解散を余儀なくされ、Y君は失業しました。

覆面ファッション

某国の首相が行方不明になった。
公務終了後に、公用車で愛人宅へ向かったところまでは確認されたが、その後の行方は杳として知れない。
ただちに、このニュースは国内をかけめぐった。
愛人宅云々は厳重に報道規制されたが、外国人記者がすっぱ抜いて、海外のメディアで大々的に報道したので、やがて国民の知るところとなった。

翌日には、首相の片腕である経済大臣が行方不明になった。
公務終了後に、公用車で女装クラブへ行ったが、そこで姿を消した。
女装クラブ云々は厳重に報道規制されたが、またしても外国人記者がすっぱ抜いたので、やがて国民の知るところとなった。

いまだ国政に強い影響力を持っている前首相も行方不明になった。
都内の料亭で、財界人と密談した後、ハイヤーでSMクラブへ行ったが、そこで姿を消した。
SMクラブ云々は厳重に報道規制されたが、またしても外国人記者が・・・ええい!しつこい!

さらに、閣僚や有力政治家が次々と行方不明になった。
これはテロリストによる組織的な誘拐事件であるとして、警察は総力をあげて捜査を進めた。
激務による捜査員の過労死が相次いだ。

数日後、首相が高速道路の路側帯に駐車してある車の後部座席に、縄で縛られた姿で発見された。
健康状態は良好だったが、額と両頬に『国賊』と大きな字で刺青が彫られていた。

経済大臣は、都内の郵便局の便所の中から、さるぐつわをかまされた姿で発見された。
首相と同様に、額と両頬に『売国奴』と刺青が彫られていた。

前首相は、郊外のゴルフ場のクラブハウスの便所で発見された。
額と両頬には『馬鹿』と刺青が彫られていた。

その他の行方不明になっていた閣僚や有力議員も次々と発見された。
みんな顔に刺青を彫られていた。
でっぷり太った女性閣僚は『豚』。ベンチャー企業の経営者である若手議員は『守銭奴』。利権の噂が絶えない長老上院議員は『利権屋』と刺青が彫られていた。
中には『短小』、『早漏』などと刺青を彫られた気の毒な議員もいた。
刺青は、特殊な技術で肉の奥深くまで彫りこまれているため、手術で消すことは不可能であることがわかった。

おりしも、下院議員選挙が目前に迫っていた。
こんな顔で国民の前に出ることはできない。
困惑した政府首脳は、国民の洗脳で実績のある広告代理店に相談した。
広告代理店の幹部はこともなげに言った。
「覆面をすればいいんです。ほら日本のどこかの県に覆面をした議員がいたじゃありませんか。
議員がみんな覆面をするようにすればいいんです。
しかしその前に、覆面をファッションとして国民に広める必要があります。
たとえば、馬鹿な国民が喜んで見ている愚劣なバラエティー番組の出演者に覆面をさせるんです。
『なにー、その格好』
『あら知らないの、覆面よ、流行ってるのよ。』
『覆面をしないでテレビに出るなんて、あんた遅れてるわねー』
といった会話をさせればいいんです。
たちまち馬鹿な国民が真似しますよ。」

さっそく、マスメディアを動員して、覆面ファッションの宣伝が行われた。
タレントはみな覆面をしてテレビに出演するようになった。
低能の女子高生が真っ先に飛びついた。
韓流スターが覆面をしてテレビに登場すると、中年女性も真似して覆面をするようになった。
経済界も全面協力した。大企業の経営陣はこぞって覆面をして出社した。
上のすることは下がまねる。特に強制したわけでもないのに、社員たちはみな覆面をして出社するようになった。
覆面をしないで街を歩くのは恥ずかしいというまでになった。
首相は安心して、覆面姿で遊説に出かけた。

迷惑宗教

実に迷惑な宗教団体が発生したそうです。
まあ、宗教団体というのは、概して迷惑なものですが、これは一味違うそうです。
法華系の団体で、お題目を唱えるのですが、お題目の声が大きければ大きいほど御利益が大きいという困った主張をしているのだそうです。
しかも、現世利益を売り物にして、おんぼろアパートに住む低所得者をターゲットに布教をしているそうですから、近所迷惑はなはだしいことになります。
うるさいと抗議すると、それを宗教弾圧だとして、仲間を呼んで、抗議した人の家を取り囲んで、24時間大音声でお題目を唱えるのだそうです。
あの、○原○○子が集団発生したような状況です。
たまりかねて警察に通報しても効果がありません。
逮捕されれば、法難ということになって、教団内の地位が上がるのだそうですから、怖いものなしです。
マスコミも恐れて全く報道していないようです。

(これはフィクションです。実在の個人・団体とは関係ありません)

こんばんは

ピンポ~ン
「こんばんは~。」

「わわわ、で、で、出たあ~。」

「ど、どうしました。」

「どうしたもへったくれもあるか。お前は『こんばんは』だな。」

「僕は仏壇のセールスマンです。何ですか、その『こんばんは』って。」

「なんですかもかんですかもあるか。たった今『こんばんは』と名のったじゃないか。」

「そりゃ夜ですからね。言いますよ『こんばんは』って。それより仏壇買ってください。」

「とぼけるな。『こんばんは』から仏壇など買えるか。わしは子供の頃よく言われたもんだ。早く寝ないと『こんばんは』が来るってな。」

「まあ落ち着いてください。僕は『こんばんは』じゃありません。仏壇売って15年。まじめで正しいセールスマンです。」

「まじめで正しいセールスマンが、なんで『こんばんは』なんて言うんだ。」

「ですから挨拶ですよ。昼間だったら『こんにちは』って言いますよ。」

「なにい、『こんにちは』だと? ますます怪しい。妖怪変化は出て行け!」

世襲の弊害

本社の部長から呼び出された。
店の図面と従業員の写真を持って本社へ来いという。
俺は、鏡ヶ里という地方都市にある、大手資本傘下のスーパーマーケットの店長をしている。

「今度、小野寺新一氏が3ヶ月間、鏡ヶ里店の店長になることになった。
知ってのとおり新一氏は社長の御令息で、将来は社長になる人物だ。
現場を肌で体験する必要があるのだ。
君は副店長として新一氏を補佐し、実質的に店をきりもりして欲しい。
なに、格下げでは断じてない。待遇は今のままだ。
無事に3ヶ月を過ごせたら、栄転もあり得る。
鏡ヶ里は、社長が戦時疎開で幼少時を過ごしたところで、特別な意味がある。
社長直々の命令だ。逆らうことはできんよ。
ところで、店の図面は持ってきているね。」

と部長は一気に言った。
俺は図面を広げた。

「店長室はないのだね。」

「はい、ワンフロアの事務室に店長の机があるだけです。」

「それはまずい。新一氏には専用の店長室が必要だ。
専用トイレ、シャワー室、応接セットを置く必要がある。」

「そんなスペースはありません。」

部長は図面を指さして言った。
「ここの従業員の更衣室と休養室と仮眠室をつぶせばいい。
新一氏は一流品でないと承知しない方だから、机も、椅子も、じゅうたんも最高級品を揃える必要がある。パソコンも最新の一番高性能なもので、インターネット用の高速専用回線を引く必要がある。
そのほかテレビや冷蔵庫やオーディオセットも必要だ。」

俺はあきれて、反発した。
「客用のトイレや駐車場の改修をお願いしても、予算がないからと断られているのに、そんな余計な出費が許されるのですか。」

「君も管理職だし、もう若くはないんだから、余計な反発はしない方がいいね。」
と言って部長はいやらしい笑い顔をした。

「従業員の写真は持ってきたろうね。」
俺は写真を出した。
部長は写真をながめて言った。

「ああ、この3名は解雇するように。
新一氏は不細工な女が大嫌いだからね。」

「次に、これは一番重要なことだが、新一氏の在任中に売り上げが落ちたら大変なことになる。
連日採算無視の大バーゲンをやって欲しい。」

「そんなことしたら収益がひどく悪化しますが。」

「決算は9ヶ月後だ。残りの6ヶ月で挽回すればいい。」

そんなことは不可能だ。赤字決算となるに決まっている。そしてそれは俺の責任になるのだ。
俺は退職を決意した。
こんな会社に将来があろうはずがない。
こんなこともあろうかと、以前から密かに私物化していた顧客情報などの企業秘密を手土産に、ライバル会社へ転職しようと思う。

許認可について

村役場に許可をもらおうと申請に行ったら、これは村条例に抵触するので許可できないと言われました。
「なんとかなりませんか。これが認められないと私たちは破産です。首を吊らなくてはなりません。お願いです。なんとかしてください。」
と粘ったら、
「う~ん。村役場ではどうにもなりませんが、『トビ役場』なら何とかなるかもしれません。場所を教えますので、行って相談してみたらどうでしょう。」
と言って、地図を書いてくれました。

『トビ役場』というのは、村はずれにあるディスコみたいな建物です。
中では、派手な服装をした若者が、
「アチャー」とか「ウヒョー」とか叫んで飛び跳ねています。
「あのう、ここが『トビ役場』ですか・・・」
とおずおずとたずねると、
「そうだよ~ん」
と若者が軽い調子で答えます。
こんな若僧に許可権限があるのだろうかと不審に思いながらも、
「実は・・・」
と言って用件を伝えると、
「ブーッ。これダメダ~メ。うちじゃ無理よ~ん。」
と冷たい返事。
「そこを何とか・・・」と粘ると、
「じゃ、『イガイガ役場』へ行ってみたら~。なんとかなるかもしれないよ~ん。」
と言って、地図を書いてくれました。

『イガイガ役場』というのは、村はずれにある道場のような建物です。
中では、柔道着を着た若者が、
「エイヤーッ」とか「トリャーッ」とか叫んで稽古をしています。
「何か御用でしょうか。」
とイガグリ頭のたくましい好青年が、汗をふきふき応対に出ました。
これは頼りになりそうだと思い、
「実は・・・」
と言って用件を伝えると。
「誠に残念ですが、ここでは許可できません。」
と冷たい返事。
「そこを何とか・・・」と粘ると、
「それでは『ドン役場』へ行ってみたらいかがでしょう。」

私はついに勘忍袋の緒が切れて、
「いいかげんにしろ。トビ役場だのイガイガ役場だのわけのわからないことを言って、今度はドン役場だと? 人を馬鹿にするな。」
と叫んでしまいました。
青年は「まあまあ落ち着いて。『ドン役場』へ行けはきっとなんとかなりますから。」
と言って地図を書いてくれました。

『ドン役場』というのは、村はずれにある砦のような建物です。
玄関で「ごめんください」と呼ぶと、ドドドドンと太鼓がなって、和服姿のぎょろ目の大男が、のっそりと現われました。
「ここは『ドン役場』ですか?」と聞くと、
「いかにも、ここがドン役場でごわす。して用件は?」
と野太い声でたずねるので、
「実は・・・」
と言って用件を伝えると、
「おいどんにお任せあれ。」と男は力強く言って、胸をどんと叩きました。

数日後、無事許可がおりました。
私たちはお祝いに宴会を開きました。
酒を飲んでみんなで歌いました。

♪ハァ 村役場にトビ役場
♪イガイガ役場にドン役場
♪天丼高いぞいまいましい
♪牛丼まずいぞいまいましい

6番目の臓

五臓六腑といわれるように、臓と名の付く器官は5つある。
(六臓六腑という説もあるが、ここでは無視する)
東洋医学に造詣の深いアメリカの医学者ナラハミテ博士は、6番目の臓を発見し、これを六臓(ROKUZO)と名付けた。
六臓は健康な人には存在せず、死期がせまった重病人の体内にのみ「発生」する。
発生する場所は一定ではないが、心臓や肺の陰に発生することが多いという。
六臓は小指の先程度の小さな肉の塊で、患者の死の直前に、数秒間「トットットットッ」と激しく律動する。
六臓が律動をはじめると、もはやどんな手段を講じても患者を生かすことはできない。
ナラハミテ博士は、六臓を「死を完成させるための器官」と呼んだ。
そして、六臓は、魂を浄化させ、天国へ昇るための「エンジンのようなもの」であると主張した。
ナラハミテ博士の学説は、当然医学界から無視されたが、オカルト関係者からは歓迎された。

ナラハミテ博士は、六臓のはたらきを調べるため、非情な人体実験を行ったといわれている。
患者をわざと見殺しにして、死にゆく患者の六臓の観察を行ったというのだ。
ナラハミテ博士は、患者の遺族に告発され、逮捕された。
証拠不十分で刑事罰は逃れたが、医学界から追放されたナラハミテ博士は、麻薬におぼれ、極貧のうちに窮死したという。
しかし、ナラハミテ博士は、オカルト界の伝説の人となり、博士をたたえる歌が作られた。

一臓はイッヒッヒ
二臓はニンニンニン
三臓はサッサッサ
四臓はシッシッシ
五臓はコッコッコッコッコ
六臓はトットットットット
ナラハミテ ナラハミテ
ナラハミテ ナラハミテ
ロンリー ロンリー ナラハミテ
ロンリー ロンリー ナラハミテ
ロンリー ロンリー ナラハミテ ナラハミテ ナラハミテ
ロンリー ロンリー ナラハミテ

(註)
盗作魔アンティオタキウス3世は、この歌のメロディーを「ハルマゲドン」という歌に盗用している。

よう式

まさかこんな所で辞令をもらうとは思わなかった。
ぼくは、たまたまこの海辺に泳ぎに来て、財政課長の辞令をもらってしまったのだ。
当然財政は逼迫した。
真赤な赤字がとめどもなく流れだした。
村は財政破綻でつぶれるかもしれない。
一刻も早く財源を確保しなければならないのだ。
しかし不案内なこの漁村で財源を確保するのは容易なことではない。

「もしもし、この近所にお金はありませんか。
あなたに義侠心というものがあるなら、ぼくをお金があるところまで案内してください。」

「なるほど、きみが言わんとする意味が、だいたい見当がつきました。
きみはこう言いたいのでしょう。金はどこだ!」

「悪質な冗談はやめて下さい。
村は財政破綻でつぶれるかもしれないのですよ。」

「そうだ、霞ヶ関へ行けば金があるかもしれない。
おお、そうじゃ。」

****** 霞ヶ関にて ******

「役人さん、かくさないでください。
ここには補助金があるはずです。」

「どんな補助金を捜しとるのかね。」

「補助率が高くて何にでも自由に使える補助金が絶対必要なのです。
そして会計検査が免除されるならなお好都合なのです。」

「するとうちの省で担当している特定地域構造改革活性化推進近代化促進特別緊急対策事業補助金のことだね。」

「役人さん出世しましたね。
たしかに特定地域構造改革活性化推進近代化促進特別緊急対策事業補助金は新機軸です。
この庁舎も特定地域構造改革活性化推進近代化促進特別緊急対策事業補助金で建てたものでしょう。
しかしこのアイデアは、うちの村長も、隣村の村長も考えていたものです。
もしかしたらあなたは田舎の村長さんではないですか?」

「ギクッ。これには深ーいわけがあるのです。」

「どんなわけです教えてください。」

「それには特定地域構造改革活性化推進近代化促進特別緊急対策事業の創設経緯を説明しなければならないのです。
けれどそれはできない相談です。」

「なるほど、それではききますまい。
その秘密はきっとこの補助金の内容にあるのでしょう。」

「そのとおりです。新規事業であっても、実は既成の陳腐化した事業の焼直しなのです。

「では、ごきげんよう。」

「達者でなぁ。」

****** 某省の局長室 ******

和服姿の女性の局長が座卓に向かって酒を飲んでいる。

「局長!補助金をください。」

「ここは田舎者のくる所ではありません。
わたしは高級官僚ですもの。」

「お願いです。そんなことをいっている場合ではないのです。
村がつぶれるかもしれないのですよ。」

「わかりました。では補助金申請ごっこをしてあげます。
補助金申請には次の書類を提出する必要があります。
まず様式1です。これは補助金交付申請書の表紙です。
様式2は補助事業総括表です。
様式3から様式42までは補助事業計画書です。事業のカテゴリー別に40種類の様式があります。
様式43は収支予算書です。
様式44は収支予算総括表です。
様式45から様式84までは、事業別収支予算明細書です。」

「ずいぶんたくさんあるんですね。」

「いえいえ、これだけではありません。
別記様式1から別記様式40までは補助事業明細書で、事業の具体的内容をカテゴリー別に詳細に記載します。
別記様式41から別記様式80までは、事業効果説明書で、カテゴリー別に事業効果を測定して記載します。
さらに「別紙様式」というものが80種類あります。
これには事業を必要とする理由、事業実施の背景などを詳細に記載します。
別記様式と別紙様式はまぎらわしいので注意が必要です。
このほか、設計書、地図、地域住民の同意書、議会の決議書等々、事業の内容に応じて様々な添付書類が必要となります。
以上を正本1部、副本2部、写しを1部提出してもらうことになります。」

「頭が痛くなってきました。」

「そうですね。ここで説明してもらちがあきませんね。
このビルの9階に特定地域構造改革活性化推進近代化促進協会という外郭団体があります。
そこに加入して会費を払えば、当省のOBが申請手続きについて教えてくれるはずです。
申請様式もそこで売っています。
一枚250円(税別)で244枚ありますから消費税込みで6万4千50円になります。
なお、様式のバラ売りはいたしません。
それから『特定地域構造改革活性化推進近代化促進緊急特別対策事業の手引き』という本もあります。
これはB5判1260ページで3万9千8百円です。
補助事業を実施しようとする自治体は、この本を最低でも10部は買っていただくことになっています。」

「ずいぶん高いんですね。」

「なにをおっしゃいます。数百万、数千万の補助金がもらえるんですから、その程度の出費に文句を言ってはいけません。」


そういうわけで、書類の重みでぼくの腕はしびれるようになったのです

少年株主

きょうはK重工の株主総会の日です。
小林少年が、ほほをかがやかせて、株主総会のかいじょうへやってきました。
うけつけのおじさんが「こらこら、ここは子どもが来るところじゃないよ」といって小林君をとめました。
小林君は「ぼく、株主です」と言って、あんないじょうをうけつけのおじさんに見せました。
「これは失礼しました」と、うけつけのおじさんは小林君におじぎをしました。
そうです、小林君は少年株主なのです。
K重工のえらい人に、どうしても言いたいことがあって、おこずかいをためて株を買ったのです。

かいじょうでは、いろんな人が、会社のけいえいについて、しつもんをしています。
やがて小林君がしつもんするじゅんばんがきました。
小林君は、こんなにたくさんの大人の前で話をするのははじめてなので、とてもどきどきしましたが、ゆうきをだしていいました。

「キ91をつくってください。そしてアメリカをばくげきしてください。
ぼくのひいおじいさんは、B29のばくげきで死にました。
ひいおじいさんが死んだので、家はびんぼうになり、おじいさんは学校へいけませんでした。
おじいさんは、それがとてもくやしかったと、いつもいっています。
だから、ぜひ、ひいおじいさんのかたきをうってほしいのです。
キ91は、B29よりすぐれているとききました。キ91があれば、アメリカにかてるとおもいます。」

するとどうでしょう。K重工のえらい人たちは、まっさおになって、あつまってそうだんをはじめました。
やがて、いちばんえらそうな人が、マイクをとって言いました。

「たしかにキ91は、ゆうしゅうなひこうきでした。
わたしたちは、いっしょうけんめいせっけいをしました。
でも、よいエンジンができなかったので、つくるのをあきらめたのです。
エンジンはM重工がたんとうしていたので、もんくはそちらに言ってください。」

小林君はがっかりしましたが、すぐに気をとりなおして、
「よし、来年はM重工の株主総会にでよう。また、おこずかいをためて株を買うんだ。」
とちかいました。

富嶽はまだか

F重工の株主総会は粛々と進行していった。
まもなく閉会というときに、突然一人の老人が発言を求めた。
老人は枯れ草のようなまばらな白髪に、ほうきのような白いあごひげを生やし、鶴のように痩せて、顔には深いしわが刻まれている。
一見して90歳を超えているかと思われるたいへんな高齢だ。
すり切れた背広によれよれのシャツという、おそよ株主総会にはふさわしからぬみすぼらしい姿だが、壇上の経営陣の顔に緊張が走ったところをみると、案外大株主なのかもしれない。
老人は、震える手でマイクを握り、曲がった背筋をしゃんと伸ばし、雑木林を吹き抜ける空っ風のようなかすれた声で叫んだ。

「富嶽はまだか!まだ完成しないのか!」

会場にどよめきが起こった。
製品開発担当重役があわてて慇懃無礼に回答した。

「ご質問の趣旨を理解いたしかねます。
弊社には富嶽などという製品はございません。」

「なにをねぼけたことを!」
老人は叫んだ。
「あの幻の超重爆撃機富嶽じゃよ。
わしは若い頃、富嶽の開発にかかわったのじゃ。
あれから60有余年、いくらなんでも、もう完成しておるじゃろう。
わしは生きているうちに富嶽の雄姿を見たいのじゃ。
太平洋を飛び越えて米本土を爆撃する富嶽の雄姿を見るまでは、死んでも死にきれぬのじゃ。」

会場は騒然となった。

「富嶽ってなんだ?」

「戦時中に計画した秘密兵器じゃなかったかな。」

「なんで今頃そんな話を持ち出すんだ。」

「頭がおかしいんじゃないか?」

「静粛にお願いします!」
司会者が叫んだ。

経営陣は額を突き合わせて協議をはじめた。

「あの男が生きていたとは・・・」

「なにもこんなところであの話を持ち出さなくとも・・・」

「これは我が社の、いや我が国の存亡にかかわる重要機密だ。」

「あくまでシラを切るんだ。」

社長が登壇した。

「弊社には富嶽などという製品はありません。
 そのような製品を企画・開発している事実もありません。」

「うそをつけ!大株主をだます気か!」
老人は声を限りに叫んだ。

老人は屈強な数人の男に取り押さえられ、無理矢理会場から連れ出されていった。
その後、その老人の姿を見た者はいない。

富豪病

全身が腐乱し、苦しみ悶えて死ぬという恐ろしい病気が発生しました。
当初、腐劫病と名付けられましたが、大金持ちだけが発病するので、すぐに富豪病と呼ばれるようになりました。
政府は、富豪病対策に無制限の予算執行を許可し、医学者を総動員して研究にとりかかりました。
政府が誰のためにあるのかが明白になったわけですが、ともあれ富豪病の発生メカニズムはすぐに解明されました。

お金には毒があります。
お金をたくさん持っている人には、お金の毒素から身体を守るため、ネカチモンという抗体が形成されます。
血中のネカチモン濃度は、保有しているお金の額に比例します。
富豪病の原因となる富豪病菌は、繁殖力が非常に弱く、通常では無害な菌なのですが、ネカチモンが大好きで、ネカチモンを食って爆発的に増殖し、身体を徹底的に蝕むのです。
また、富豪病菌はきわめて耐性が強く、既存の薬剤では駆除することができません。
当面の対策としては、ネカチモン濃度を下げることですが、そのためには貧乏にならなければなりません。
それは富豪にとって死ぬよりつらいことです。
ということで、お金を持ったままネカチモン濃度を下げるという研究に莫大な国家予算がつぎこまれました。
そして、ついにネカチモン濃度を下げる薬剤「ネカチモバスター」が完成しました。
富豪たちは、こぞってネカチモバスターを飲みました。
ネカチモン濃度はみるみる下がり、富豪病の恐怖は去りました。
しかし、ネカチモンを失った富豪たちは、お金の毒素にあたって死んでしまいました。

白いマフラー

さる財団が、「生理中の女性は白いマフラーを着用すべし」という奇怪なキャンペーンをしています。
白いマフラーをすべき理由については一切述べられていません。
公共の電波や新聞雑誌を使ってこんなキャンペーンをしていいのでしょうか。
そこで、財団に趣旨を問いただしたところ、「理事長の命令で・・・」の一点張り。
この財団は、表向きは公益法人とされていますが、実情は理事長の私有物に等しいようです。
それでは直接理事長に問いただそうと接触を試みたのですが、なにしろ十数社の取締役を務める経済界の大物だけに、なかなかアポイントが取れません。それでも粘り強く交渉した結果、ようやく面会がかないました。

理事長は白いマフラーの理由を容易に語ろうとはしませんでしたが、巧みに誘導してついに聞き出すことに成功しました。

理事長が幼いころ、「少年ジェット」というテレビドラマがあったのだそうです。
その主題歌に「白いマフラーは正義のしるし」という一節があったのですが、理事長は「せいぎ」を「せいり」と間違えて歌ってしまい、友達にさんざん笑われたのだそうです。
理事長は深く心を傷つけられ、成人してもその屈辱が忘れられませんでした。
そして、功成り名遂げた今、むかし自分を笑いものにした友達の鼻をあかしてやろうと、あのようなキャンペーンをしているのだそうです。
なんともあきれた話ではありませんか。

金沢うんこ

京浜急行に乗るのは何年ぶりだろうか。
車内は妙に閑散としている。
アナウンスが眠そうな声で
「次は~金沢文庫~」

にわかに身なりの整った青年が立ち上がり、
両手の人差し指を口に突っ込み、
口をニーッと横に引いて、
大きな声で
「かなざわうんこ!」

すると、向かいにすわっていた中年紳士が立ち上がり、
同じように人差し指で口を左右に引いて、
「いわなみうんこ!」

負けじと青年が
「かどかわうんこ!」

負けじと中年紳士が
「しんちょううんこ!」

そうして、二人はネタが切れるまで、うんこの応酬を続けたのだった。

睡眠泥棒

なんでも相談室 その3

「朝起きるのがつらくてたまりません。
夜はきちんと眠っているのですが、眠くて起きられません。
昼間も眠くて、授業中に居眠りをしてしまいます。
休日は一日中眠っています。
病院に行きましたが、眠りが浅いのではないかといわれ、睡眠薬を処方されただけです。
薬を飲んでも効果がありません。
最近は、学校も休みがちです。出席日数不足で留年しそうです。
どうしたらいいでしょうか。」

「いつ頃からそんな状態になったのですか?」

「3ヶ月前からです。」

「その頃何か変わったことがありませんでしたか?」

「ぼく自身には何も変わったことはありません。」

「周囲になにか変わった出来事がありませんでしたか?」

「転校生が一人来ましたが・・・それぐらいです。」

「その転校生はどんな人ですか?」

「すごい勉強家で成績はトップです。根津君というのですが、毎晩寝ずに勉強しているという噂です。」

「わかりました。その根津君が君の眠りを吸い取っているのです。
世の中には『すいとりマン』という者が存在します。
これは、他人の努力の成果などを吸い取ってしまう超能力者です。
『すいとりマン』はスポーツ界や芸能界に多く生息しています。
ろくに練習をしないのにめざましい成果をあげている人は、たいてい『すいとりマン』です。
私は『すいとりマン』にとりつかれて破滅した音楽家を何人も知っています。
学生の『すいとりマン』は他人の勉強の成果を吸い取るのが普通ですが、根津君という人は心から勉強が好きなのでしょう。なので、君の睡眠を吸い取って、夜も寝ずに勉強しているのです。
これは非常に珍しいケースですが、十分にあり得ることです。」

「そんなこと、とても信じられません。」

「私の言うことを疑うなら、ひとつ実験をしてみたらいかかでしょう。
夜眠らずに学校へ行き、根津君を観察するのです。きっと根津君に異変が起こるでしょう。」

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3日後

「先生のおっしゃるとおりでした。
コーヒーをがぶ飲みして眠いのを我慢し、一晩眠らずに学校へ行きました。
根津君は顔色が悪く、ぼんやりとした様子でした。
次の日も、ネットで入手したリタリンを飲んで、眠らずに学校へ行きました。
根津君は苦しそうにしていました。そして何と授業中に居眠りをしたのです。
あの勉強家の根津君が居眠りをするとは信じられないことです。
先生も級友もびっくりしていました。
次の日も、繁華街の路地裏で手に入れた覚醒剤を飲んで、眠らずにがんばって学校へ行きました。
するとどうでしょう。根津君は学校を休んだのです。
インフルエンザで40度の熱があっても、がんばって学校に来ていた勉強家の根津君がです・・・
根津君がぼくの眠りを吸い取っていたのは間違いありません。
ぼくはこれからどうしたらいいでしょう?」

「お気の毒ですが、君に取り付いた『すいとりマン』を除去する方法はありません。
勉強の成果を吸い取る『すいとりマン』なら、君が勉強をやめてしまえば、あきらめて君から離れて、別の人に取り付くでしょうが、睡眠をやめることはできませんから、根津君は死ぬまで君に取り付いて離れないでしょう。
根津君を殺すのが一番の解決策ですが、それがいやなら、君の分と根津君の分あわせて1日16時間眠るライフスタイルを確立することです。
今から短時間で高収入の得られる職業を探しましょう。」

ついにキレた

某社の新製品ソフトウエアに、重大な問題があることが明らかになりました。
ある操作をすると、下品なオヤジが嬉々とした表情で札束を数えるアニメーションが出現し、それと同時にハードディスクが初期化されてしまうのだそうです。 これは大変なことです。

某社のサポート部門には、問い合わせや苦情の電話が殺到し、パニック状態になりました。
サポート部門主任の荒熊氏は、徹夜続きで真っ赤な目をして電話の応対に追われています。
さすがの体力自慢の荒熊主任も、鳴り止まぬ電話にキレてしまい、受話器を取り上げて大声で叫びました。

「おかけになった電話番号は現在使われておりません。
 もう一度火の元を確かめておやすみください。」

荒熊主任は高校・大学と応援団に所属し、毎日蛮声を張り上げていましたので、声量は半端ではありません。
電話の相手はさぞかし驚いたことでしょう。ショックで卒倒したかもしれません。

荒熊主任は次から次へと受話器をとって

「おかけになった電話番号は現在使われておりません。
 もう一度火の元を確かめておやすみください。」

と叫び続けます。
同僚は驚きあきれて、ぽかんと口をあけてながめているばかりです。

テレビでは、某社の社長の記者会見が放映されています。
利益追求のあまり、品質管理をないがしろにした企業体質が厳しく追及されています。
社長はマイクを前に泣きながら叫びました。

「これはイルミナティの仕業です。
 フリーメーソンの陰謀です。
 スカル・アンド・ボーンズも一枚かんでいます。
 我が社に落ち度は微塵もありません。
 むしろ我が社こそが被害者なのです。」

記者は驚きあきれて、ぽかんと口をあけてながめているばかりです。

にらみ合い

富山驕子は高級車を運転して、郊外の友人宅へ出かけた。
普段は運転手付高級車の後部座席にふんぞりかえっているのだが、この日は運転手が急病になってしまったため、自ら慣れないハンドルを握っているのだ。
筆者は車に全く興味がないので、その車がどれほど高価なのかわからないが、とにかくすごい高級車なのだ。

さて、驕子の運転する超高級車は、住宅地の狭い路地へと入り込んでしまった。
どうやら道を間違えたらしい。
「やっぱりタクシーにするんだったわ。」
と悔やんだがもう遅い。
すると前方から古ぼけた軽自動車が進んできた。
「あぶない!衝突する」
驕子はあわててブレーキを踏んだ。
衝突はまぬがれたものの、道幅は狭く、すれ違うことはできない。
驕子は、相手の車にバックするよう手で合図をした。
しかし、相手の車はその合図に従わない。
運転しているのは、凶悪な顔をした貧しそうな老爺である。
驕子は再度バックをするよう合図をした。
老爺はふんぞりかえってこちらを睨んだまま動こうとしない。
「生意気な貧乏人ね!」
驕子は怒ってクラクションを鳴らした。
すると老爺も負けじとクラクションを鳴らした。
こうして狭い路地でクラクションの応酬が始まった。
クラクションの応酬は延々と続いた。

そこは静かな住宅地である。
住民は何事が起こったのかと、路地に飛び出して来た。
2台の車は睨み合ったまま、クラクションを鳴らし続ける。
住民はクラクションをやめろと抗議したが、二人ともふんぞりかえってクラクションを鳴らし続ける。
窓を叩いて抗議しても、知らん顔でクラクションを鳴らし続ける。
住民はたまりかねて警察に通報した。

しばらくして警察官がやってきた。
驕子は警察官に向かって叫んだ。
「私を誰だと思っているの。
 富山財閥夫人ですわよ。
 弁護士を呼びます。
 弁護士が来るまで何も言いません。」

「まあ、奥さん、とにかくバックして道をあけてください。」
警察官は慇懃に驕子に言った。

驕子は怒った。
「なぜ?なぜ私が?
 私の車は超高級車なんですわよ。
 高い税金を払ってるんですわよ。
 消費税も自動車税も重量税もたっぷり払ってるんですわよ。
 優先権があるのは当然でしょ。
 貧乏人は道を譲るのが当然でしょ。
 なんで、私がバックしなきゃならないの。」

一方老爺の方は、警察官が何を言っても「ううっ、ううっ」とうなるばかりで言うことを聞かない。
クラクションを止めろと命じても「ううっ、ううっ」とうなるばかり。
ドアを開けろと命じても「ううっ、ううっ」とうなるばかり。
ああ、これが有名な「ううじじい」なのであった。
警察官は、この老爺には何を言っても無駄だと悟った。
やがて老爺の車のエンジンが止まった。
ガソリンが切れたようだ。
老爺の車は運転手を乗せたまま、レッカーで強制移動となった。
レッカーで移動中も、老爺はクラクションを鳴らし続けていた。
バッテリーが切れるまで、クラクションを鳴らし続けたのだ。

驕子は叫んだ
「ほーっほっほっほっ。勝ったわ。勝ったのだわ。」

一万人の交響曲

あまりの巨大さに到底上演は不可能とされた「一万人の交響曲」がついに上演された。
国王の在位何年目かの記念イベントだそうだ。
会場はあきれるほど巨大なホールである。
ステージは航空母艦の甲板のように客席にせり出している。
演奏者はプロ・アマの混成で、小学生から老人までの様々な人々で構成されている。
上演時間8時間という大曲のため、演奏者は順次入れ替わっている。
楽屋からステージへ向かう通路は、演奏者がひしめきラッシュ時の駅のようだ。
ステージへ登る階段で、出番の終わった女子高生の一団とすれ違った。
D管トランペットを持った子が泣きじゃくっている。重大なミスをしたのだろう。
私は第9楽章の16番ホルンを担当することになっている。
合唱団の人混みをかきわけ、やっと定位置についた。
私のパートは、低いC音(F管で1、3バルブを押さえた最低音)を8拍延ばして、8拍休む。それだけをずっと繰り返すというきわめて単調なものだ。
それを30分も続けるのだからたまったものではない。
20分経過したところで、トリップ状態になってしまった。
後ろの奏者に頭を叩かれて正気に戻るまで、しばらくの間でたらめな演奏をしていたらしい。

私はでたらめな演奏をした罰として、終演後の客席の清掃を命ぜられた。
清掃要員には、階段ですれ違った女子高生もいた。
出演者の演奏は逐一チェックされ、ミスをした者はリストアップされて罰を与えられるようだ。
上演は休憩なしで8時間に及び、その間観客は出入りや移動が禁止されていたので、客席には大小便が散乱して目も当てられない状態になっている。
あまりのひどさに主催者は、次回の上演では天安門広場方式を採用すると言っている。
次回って・・・ またやるのか?

なんでも相談室2

「私の夫は一部上場企業の管理職です。海外勤務が長かったのですが、海外では広い屋敷と運転手付きの車を持ち、多数の使用人を使い、安楽な生活を送っていました。
夫 が栄転して本社勤務になり、一家そろって帰国したのですが、社内の地位が上がり収入も増えたはずなのに、我が家の生活水準は大幅に下がってしまいました。 狭いマンションに住み、使用人を雇うことなど到底考えられず、毎日家事や育児に追われる生活を送っています。大好きだった買い物も劇場通いもままならなく なりました。
我が家は、世間的には豊かな階層に属すると思うのですが、今の日本では豊かさが全く実感できません。これはいったいどういうことなのでしょうか。」

「お答えします。
日本で豊かさが実感できないのは、過去の誤った社会主義的な政策のため、貧富の差が少なく、激安な賃金で黙々と働く貧民階級が存在しないからです。
し かし、ご安心ください。我が国では構造改革の名のもとに貧民階級の創成と階級の固定化政策が進められています。新たに創成されつつある貧民階級は、貧しさ を自己の責任であると率直に受け入れ、富裕階級に奉仕することを天命とわきまえた理想的な労働者階級です。彼らは勤勉ですが、上昇志向はなく、子弟の教育 などに無駄な金を使うこともなく、低賃金でつつましく暮らします。
また、規制緩和の名のもとに「雇用の自由化」が進められています。労働基準法や 最低賃金制度のような社会主義的制度を廃止して、自由に安心して安い賃金で人を雇える環境の整備が進められています。これにより、人件費は途上国並みに引 き下げられ、国際競争力は高まり、産業の空洞化は解消され、日本経済は再び活気を取り戻すでしょう。
とはいえ、貧民階級の増大により、消費が冷え 込んでしまったら大変です。そこで、富裕階級は、贅沢三昧な生活をして消費の拡大に貢献することが義務付けられます。ケチケチと金を貯め込む者は国賊と非 難され、財産を没収されることになるでしょう。一定水準以上所得のある国民は、豪奢な邸宅に住み、高級車を乗り回し、美食に明け暮れ、多数の使用人を使 い、家事や育児に煩わされることなく「今日は帝劇、明日は三越」の生活をおくることが責務となります。
こうして日本でも「国際水準の富裕階級の生活」ができる日がやってきます。
もうしばらくの辛抱です。」

必殺口臭男

アーサー・ミッツ上院議員は、世界でいちばん息が臭い男といわれています。
ミッツ上院議員が発言すると、議場にひどい悪臭がたちこめて、とても審議どころではない状態になってしまいます。
たまりかねた議員たちは、ミッツ氏の解職決議案を提出し、圧倒的多数で可決しました。
こうしてミッツ氏は議員資格を剥奪されてしまったのでした。
ミッツ家は三代続いた政治家一族で、若くして世襲で議員になったアーサー・ミッツ氏は、政治家以外の生活のすべを知らず、たちまち路頭に迷ってしまいました。
しかし捨てる神あれば拾う神あり。ミッツ氏は某新興レストランチェーンに、営業妨害要員として雇われました。
ミッツ氏は、商売がたきの店に客として入り、深呼吸を数回。たちまち店内に悪臭がたちこめ、食事どころではなく、客はみんな逃げ出してしまいます。
これを何度か繰り返すことで「あの店は臭くてたまらん」と評判になり、営業が立ちゆかなくなってしまいます。
店内で深呼吸することには何の違法性もないので、商売がたきたちは泣き寝入りするしかありません。
自衛のため、店頭にミッツ氏の似顔絵を掲げて「この男の入店禁止」とする店もありましたが、ミッツ氏は変装の名人なので効果がありません。
こうして某レストランチェーンは、ライバルを蹴落として急成長し、ミッツ氏は謝礼として多額の選挙資金を得て、政界に復帰しました。
ミッツ氏の復帰に伴い、上院ではガスマスクの導入を検討しているそうです。

なんでも相談室

「学校で『君が代』という歌を教わったのですが、歌詞の意味がわかりません。
先生に質問しても要領を得ません。教えてください。」

「お答えします。
最初の『きみ』ですが、これは人の名前です。
漢字で書くと『喜美』です。
喜美さんというのは、もとは新橋の芸者です。
某有名政治家の愛人だったのですが、今はレストランなどを経営する女性実業家となっています。
自衛隊と深い関係がある人で、牛のような目をしています。
学歴はないけれど、漢字をたくさん知っているのが自慢です。」

「くわしいんですね。」

「実は、ぼくは喜美さんが経営する会社で働いていたことがあるんです。
労働争議を起こしてクビになりましたが・・・
で、次の『がよ』ですが、これも人の名前です。
正しくは『がよう』なんですが、漢字で書くと『娥楊』で中国人の名前です。
喜美さんは実は中国人で、本名を娥楊というのだという噂があるんですね。
次の『ちよ』と『やちよ』はもちろん人の名前です。
千代というのは、今は女の名前とされていますが、昔は男の名前だったのです。
犬千代とか竹千代とかいうのはみんな男です。
内助の功で知られた戦国武将山内一豊の妻は、千代という名前なのですが、この人は女ではなくオカマだったと八切止夫という人が書いています。」

「へえ~、じゃ八千代もオカマですか?」

「その可能性は十分にありますね。
つまり、『千代に八千代に』というのは、『オカマの容疑がある』という意味なんです。
ここまでをまとめると、『喜美さんは本名を娥楊という中国人のオカマであるらしい』という意味になります。」

「へえ~、そういう意味だったのですか。」

「次の『さざれいし』ですが、これは力士の名前です。
江戸時代の人だそうです。
漢字で『佐々嶺石』と書いたそうです。」

「強かったのですか?」

「力はものすごく強かったのですが、技がなかったのであまり勝てなかったそうです。
雷電と闘って一度だけ勝ったことがあるという記録が残っています。
谷風には一度も勝てなかったそうです。」

「いわおとなりてはどういう意味ですか?」

「お相撲さんのトレーニングに『てっぽう』というのがあるでしょ。
てっぽうは柱を相手にやるのですが、佐々嶺石は力がありすぎて柱をこわしてしまうので、岩を相手にてっぽうをしていたんだそうです。
岩を相手にバシバシ稽古をしたので『岩音鳴りて』というわけです。」

「こけのむすまでとは?」

「佐々嶺石は風呂が嫌いな不潔な男で、体が汚れて苔が生えるまで、風呂に入らなかったという意味なんですね。」

「うわあ、きたない! 
対戦相手はたいへんだったでしょうね。」

「そうですね。苔が生えるくらいですからね。きたないし、臭いし。そうやって相手の戦意を喪失させて勝とうという作戦だったのでしょうね。
でも、そこまでやっても佐々嶺石は谷風には勝てなかったのです。
ということで、この歌はオカマの『喜美』さんは、『佐々嶺石』のように懸命に努力しても、卑劣な手段を使っても、結局は勝てないのだという意味なのです。
喜美さんの商売敵が、酔っぱらった時に作った歌だといわれていますね。」

「たいへんよくわかりました。ありがとうございました。」

「また何かわからないことがあったらいらっしゃい。」

通報書士

某国は構造改革と称して熾烈な弱肉強食の競争原理を導入し、金銭万能社会を作り出したので、国民の道徳は退廃を極 め、己の利益のためには手段を選ばぬようになり治安が極度に悪化したので、国民を相互監視させるため通報義務制度を設けたところ、競争相手を失墜させるた めに当局に虚偽の通報を行うことが日常的に行われるようになり、警察・司法が混乱し収拾がつかない状況になってしまったので、一般人の通報を禁じ、国家資 格の「通報書士」を設けることにしたところ、通報書士は絶大な権力を持つようになり、たちまち腐敗堕落して金を積めば平気で虚偽の通報をするようになった ので、人々は通報書士を恐れて貢ぎ物をして通報しないよう頼むことが当たり前のように行われるようになり、貢ぎ物を惜しんだ多くの無辜の市民が通報書士の 虚偽の通報により逮捕されたが、当局はこれを捜査などせずに起訴してしまい、すべてが有罪となり幾多の善良な市民が獄につながれることになったが、これは いわば犯罪捜査・司法の民営化とも考えられ、多額の歳出が節減できるとして警察や検察の大幅な人員削減・組織縮小を断行し、浮いた費用を軍備拡張に充てよ うとしたところ、軍需産業から多額の賄賂が寄せられて政府としては一挙両得となったが、いかに多くの通報書士を抱えるかが企業の生き残り戦略となり、幾多 の善良な企業が虚偽の通報のために廃業に追い込まれたことか。ああうそつきが栄える末法の世よ。

燎原の火

某国は、急速な経済成長をとげたが、経済政策や税制が著しく不公平であったため、貧富の差が極端に広がり、人口の1%に過ぎない富裕層が、富の9割を保有するという不平等社会になってしまった。
幸いなことに、生活必需品の物価が安いため、庶民はなんとか衣食はまかなえたが、住宅事情は劣悪であった。
加えて農村の疲弊により、都市に急激に人口が集中したので、深刻な住宅難になってしまった。
庶民は足を伸ばして寝る余裕もないほどの狭い部屋で、息を殺して生活していた。
劣悪な居住環境が原因で、多くの不幸な事件が発生した。

こうした庶民の怨嗟の声に応えるかのように、金持ちの邸宅に放火する一団が発生した。
彼らは、厳重な警備をかいくぐり、金持ちの邸宅を放火して回った。
その手際は実にあざやかで、軍の特殊部隊も舌を巻くほどであった。

消防はもっぱら延焼を防ぐことに懸命で、邸宅の消火活動はしなかった。
消防士自身が、雨漏りのする4畳半一間に、乳飲み子を含む家族5人で暮らしているので、内心「いい気味だ」と思っていたからだ。
警察の捜査も遅々として進まなかった。
警察官自身が、すきま風が吹き込む6畳一間に、寝たきり老人を含む家族6人で暮らしているので、内心「ざまあみろ」と思っていたからだ。

地域住民は防犯に協力しなかった。
みんな住宅難にあえいでいるので、「天罰だ」と思っていたからだ。
それどころか、積極的に放火魔に協力する者も少なくなかった。

放火魔は文字通り燎原の火となって、連日連夜金持ちの邸宅を放火しまくった。
彼らは庶民の英雄となった。

金持ちは警備を厳重にしたが、警備員の士気は極めて低かった。
警備員自身が、空き地に所有者に無断で廃材で建てた掘っ建て小屋に住んでいるので、内心「放火魔がんばれ」と思っていたからだ。

こうして、わずか半年の間に、ほとんどの金持ちの邸宅が焼かれてしまった。
家を焼かれた金持の中には、前にも増して豪奢な邸宅を再建した者もいたが、完成するやいなや放火されてしまった。
保険会社は大赤字となり次々と倒産した。
生き残った保険会社も、高額な邸宅の火災保険は取り扱わないようになった。

金持ちはホテル暮らしを余儀なくされたが、今度は金持ちが投宿しているホテルが放火魔に狙われることとなった。
金持ちは火におびえ、発狂するものも続出した。

やむなく、金持ちは小さな粗末な家を建て、普段はそこで質素に暮らし、週末だけ 国外に建てた豪奢な別荘で金持ち気分を味わうこととした。

かくして某国は、家を見ただけでは貧富の差がわからないという、世にも不思議な国になった。

プロフィール

HN:
神楽坂雲如
性別:
男性

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